2019 牧野 哲平
2019年度 岡山理科大学工学部建築学科 卒業設計審査会 最優秀賞
令和元年度建築学科優秀卒業設計作品表彰[日本建築学会中国支部]
第15回優秀卒業作品表彰 優秀賞[岡山県建築士事務所協会]
第 61 回全国大学・高専卒業設計展示会 出展作品
瀬戸内には、今も昔も船足の残る穏やかな内海の光景が広がっている。この計画は、その原点となる光景に立ち返り、牛窓の景観調和に挑戦した意欲作である。
計画地である牛窓は、かつて潮待ち風待ちの港町・唐琴通りとして栄えていた。しかしながら今は荒廃し、その存在は忘れ去られようとしている。一方で、ギリシヤのミティリニ市との姉妹都市締結をきっかけに、昨今オリーブや白い外壁が特徴的なリゾート開発が局所的に展開している。残念ながら現状では、両者が調和することはなく、ちぐはぐとした風景を牛窓にもたらしている。
この計画では、瀬戸内とエーゲ海に共通する船足の残る穏やかな内海の光景に立ち返り、帆が集積する造形に可能性を見出した。そして、なまこ壁等の唐琴通りの要素と、組積造等のギリシヤの要素をそれぞれ抽出し、それらを一旦解体して、抽象的な模様として帆へ転写した。また、この帆の造形は、唐琴通りにも展開され、井戸端の風景の復活にも寄与している。
明治以降、東洋と西洋の狭間で、日本の街並みは大きく翻弄されてきた。この計画では、内海の原風景へと「溯源」し、一旦「解体」した現状の不調和な風景を、原風景に即した新しい風景として「再構築」するという荒業を、曲がりなりにもやり遂げている。画一的な保存でもなく、スクラップ&ビルドでもない、新たな街並み形成のあり方に一石を投じたと言えるのではないだろうか。
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